冷凍弁当の「おいしさ」はどこで決まるのか — 冷凍と解凍の構造
冷凍弁当の食感は、凍らせるときにできる氷の粒の大きさと、温めるときの熱の入り方でおおよそ決まります。急速冷凍の意味、再加熱に強い食材と弱い食材、レンジの加熱ムラと湯せんの違いを整理しました。
「冷凍弁当はおいしくない」と言われることがあります。ただ、その印象は商品の良し悪しだけで決まるものではありません。冷凍と解凍という工程そのものに、食感が変わりやすい理由があります。
食感が決まるところは大きく2か所です。凍らせるときに食材の中でどんな氷ができるかと、温めるときに熱がどう入るか。前者はメーカー側の設備と設計の話ですが、後者は家庭側の話で、同じ商品でも温め方によって結果が変わります。
冷凍で起きること: 氷の粒が大きいほど水が出る
結論から言うと、食感を左右するのは凍る速さです。
食品の中身の多くは水分です。水は凍ると体積が増えるため、食材の中にできた氷の粒は、まわりの細胞や繊維を内側から押し広げます。ゆっくり凍らせるほど氷の粒は大きく育ち、組織の壊れ方も大きくなります。壊れた組織は解凍のときに水分を抱えきれず、ドリップ(解凍時に流れ出る水分)として外に出ます。うま味の成分も一緒に出ていくため、パサついた食感になりやすくなります。
だから業務用の冷凍では急速冷凍が使われることが多くなっています。水分が氷に変わっていく温度帯をできるだけ短時間で通り抜けさせ、氷の粒を小さいまま留める狙いです。自宅で凍らせた作り置きより届いた冷凍弁当のほうが食感が保たれていると感じるのは、この設備の差によるところが大きいと考えられます。
再加熱に強い食材と、弱い食材がある
食材によって、冷凍と再加熱への強さは違います。
| 比較的崩れにくい | 食感が変わりやすい |
|---|---|
| 煮物・煮込み、カレーやシチュー | 葉物野菜、生野菜 |
| ミートソースなどのソース類 | 揚げ物の衣 |
| ひき肉料理、豆・根菜 | 白身魚、麺類 |
理由はどちらも水分です。液体の中にある料理は、多少水が出ても味が薄まる程度で収まります。一方、葉物や白身魚のように組織が繊細なものは、抜けた水分がそのまま食感の変化として出ます。揚げ物の衣は、こもった蒸気を吸ってしんなりしやすい部類です。
この前提があると、メニュー構成の読み方が変わります。煮物や煮込みを中心に組む構成は再加熱に強い方向へ寄せた設計と読めますし、揚げ物や焼き物を前に出す構成は、そこで勝負している設計だと読めます。どちらが良いかではなく、どこに寄せたかの違いです。ブランドごとの狙いは成り立ちの記事にまとめています。
電子レンジの加熱ムラ: 同じ商品でも結果が変わる
電子レンジは、食品に含まれる水分をマイクロ波(電波の一種)で振動させて熱を出す仕組みです。そのため水分の多いところから先に温まります。ここから2つのことが起きます。
- 厚みの差 — 厚い部分の中心まで熱が届くころには、薄い部分は加熱されすぎている、ということが起こります。ごはんの塊と薄い葉物では必要な時間が同じではありません
- 位置の差 — 庫内でのマイクロ波の当たり方は均一ではなく、ターンテーブル式かフラット式かでも変わります
つまり容器の形と食材の配置が仕上がりに影響します。平たいトレーに浅く広げた形は熱が入りやすく、仕切りが深くて食材が積み上がる形は中心まで時間がかかりやすい傾向です。同じ商品でも、レンジの機種・ワット数・置き方で結果が変わります。1回目でうまくいかなくても、それが商品の限界とは限りません。
湯せんという選択肢: ムラは減るが手間は増える
レンジ以外の温め方もあります。わんまいるの「わんまいる 健幸ディナー」は、主菜1品と副菜2品を組み合わせた湯せん調理の冷凍おかずセットです。同じわんまいるでも「わんまいる美食弁当」はレンジ対応のトレー型で、温め方は会社ではなく商品ごとに決まります。
湯せんはお湯の温度以上には上がらないため、加熱ムラが出にくく、加熱しすぎにもなりにくいのが利点です。その代わり、鍋にお湯を沸かす時間と後片付けが必要で、レンジで数分という手軽さは失われます。ムラの少なさと手軽さのトレードオフで、どちらが正解ということはありません。職場で食べるなら、レンジ対応かどうかがそのまま条件になります。
おいしく食べるためにできること
家庭側でできることは多くありませんが、やる価値はあります。
- 表示のワット数と時間を守る — 500Wと600Wでは必要な時間が違います
- フィルムや蓋の扱いを表示どおりにする — 蒸気を逃がすか閉じ込めるかは、食感を決める指示です
- 途中で一度混ぜる — 混ぜてよい形状のもの(カレー、煮込み、丼もの)は温度が揃いやすくなります
- 半解凍のまま加熱しない — 中途半端に解けた状態は場所ごとの温度差が大きく、ムラが出ます。表示が「凍ったまま」なら凍ったまま入れます
- 足りないときは短く追加する — はじめから長くかけるより、10〜20秒ずつ足すほうが加熱しすぎを避けられます
- 揚げ物は水分を逃がす — 表示が許す範囲で蓋を外す、下にキッチンペーパーを敷くなど、こもった蒸気を抜くと衣の感じが変わることがあります(表示に指定があるときはそちらが優先です)
味は好みなので、まず少量から試す
ここまで構造の話をしてきましたが、最後は好みです。ちょうどいいと感じる味の濃さも、食感の許容範囲も人によって違います。構造を知ることは外れを引く確率を下げるためのもので、正解を当てるためのものではありません。
- 成り立ちの記事で、売りにしてほしいものからブランドを絞る
- 少量のセットで試す。味と、自宅のレンジでの温まり方を同時に確認します
- 続けられそうなら食数を増やす(食数の決め方)
- 宅配食の比較表の「1食あたりの価格」の行で見比べる(送料は別の行なので合わせて見ます)
最初から大容量を頼むと、口に合わなかったときに冷凍室ごと抱えることになります。味は試さないと分かりませんが、試す量は選べます。